材木屋の真実 材木屋も知らない情報が一杯

ブラックウォールナット・特選原木ブラックウォールナット
特選原木
ホワイトオーク・原木ホワイトオーク
特選原木

第1条 日本の木材品質と量について

日本には森林資源が豊富にあるのに、何故世界各国から大量に輸入されるのでしょう。
色んな角度から検証してみます。

1.日本の森林育成政策の失敗

戦後日本は高度経済成長を果たしましたが、その裏では現在多発している問題が水面下で進んでいたのです。1950年代、国の林業政策は森林経営と称して成長の遅い天然の広葉樹・天然の針葉樹を大量に伐採し、成長の速い人工の針葉樹(スギ・ヒノキ)を大量に植林したのです。
1980年代まではその政策に間違いが無いように思われていたのですが、住まいの建て方が大工の職人技術から工場生産・プレカ ットに大きく変化していく過程で大量に植林されたスギ・ヒノキが徐々に使われなくなりました。
そして、これは現在の花粉症患者の大量発生に繫がるという負の効果をもたらしました。

2.住宅建築工法の変化

1980年代高度経済成長を成し遂げる為には、生産性の向上が日本の経済政策の要でした。池田内閣の所得倍増計画以降、日本人のほとんどが中流意識を持つ様になっていました。当時は大工が一軒ずつ注文を受け手仕事にて建てあげるのが一般でした。しかし大量の注文が有り、それをこなす仕組み『プレカット』を極一部の木材業者が始めていました。小生は昭和33年生まれです。社会人になったのが昭和55年ですが、この時初めてプレカット工場を見に行く機会がありました。
当時は秘密になっていたので、配達する運送業者の運転手と一緒に工場に入場しましたが、肝心の工場内部は関係者以外立ち入 り禁止になっていました。しかし工場外に、出荷前の部材を見る事が出来ました。それを見たときの感想は今でも覚えています。
当時需要が旺盛で供給が安定し、しかも値段が今より高かった人工林のスギ・ヒノキは何らかの影響は受けるだろうなと思いました。また、当時の大先輩が『私は1ヶ月にヒノキの管柱と通し柱だけで1億円を売っているが、それは私の仕事と外部環境が凄くマッチしただけであって、決して自分の力では無いですよ。服部君は奉公が終わって父親の会社に戻っても外部環境にマッチ出来る頭脳を絶えず持つことが長く商いを続ける事に必ず繋がります』と、話していたのを記憶しています。

3.職人の不足

2017年現在、日本中超人手不足になっています。あらゆる業界で問題になっています。
社会的インフラになっている宅急便の業界・レストラン業界・建築業界全ての産業に悪影響を齎しています。高度 経済成長期は人口も増えていたのですが、成熟経済に移行して、晩婚化、少子化が日本の経済成長の妨げになっているのではないかと議論されつつあります。しかし抜本的に人手不足を解決する手段がない為に、工業化商品を大量に使わざるを得ない状況になり、無垢材だけでなく突板さえも使えない状況に陥っています。
1954年東京オリンピック、1970年の大阪万博時期をはるかに超える人手不足が今後我々の生活環境にどんな影響を及ぼしてくるのか定かではありません。
東日本大震災・熊本地震等の天災が何時日本国土に悪影響を及ぼしてくるのか解らない状況でもあり、技術者つまり職人を養成することは今後の日本国の発展にも関係すると思われます。

4.無垢材から集成材へ

プレカット工場も当初はスギ・ヒノキを主体に使っていたのですが、徐々に集成材が使われる様になっていくのです。
昭和56年頃の小生の記憶を思いだすと、材質は覚えていませんが、岡山県の有名なM工業の製造した集成材の管柱を見た記憶があります。

5.効率化の追求

プレカット工場が大々的になると一層の効率化が求められる様になってきました。
効率化とは、柱材の材質を無垢から集成材へと大きく変える流れです。
大工は、柱を見る時柱の端の面(芯)と面(芯)を見ます。そしてそれに墨付けをします。しかしプレカットは、芯を見ることはできません。面しか見ることができないのです。と言うことは、プレカットは真っ直ぐな材質の材料しか使えないのです。少しでも曲がっていれば現場で住まいを組み上げられないのです。その点大工は多少の曲りは芯と芯を見て墨付けしているので、現場での組み立てはスムーズに行えるのです。

6.輸入木材の台頭

集成の管柱の材料もアメリカ材からヨーロッパ材に変わっています。アメリカの森林は管理されています。しかしヨーロッパはアメリカ並み、アメリカ以上に管理されています。特に人工林のヨーロッパ トウヒ(日本ではホワイトウッド・ヨーロッパスプルースと言う表現が使われている)は現在のプレカット工場の主原料になっています。また、ヨーロッパの植林木を育む森林は、森林と言う表現より畑と言う表現が似合っています。大規模な機械化が進み、徹底した省力化を達成し、価格面でコストパフォーマンスを最大限発揮できるようになった為、現在の日本の住宅の構造材(管柱)の市場はヨーロッパ 材に代わっています。(※梁は米産の米マツです)

7.スギ・ヒノキの天然林と人工林の違い

日本人に一番身近な材質はヒノキです。しかし単純にヒノキと言っても何種類かあります。小学校の社会科で習った木で木曽ヒノキと言う日本で一番代表的な木がありますが、2017年1年間の長野県木曽谷の木曽ヒノキ『天然に育ち木曽谷固有の木を木曽ヒノキと呼ぶ』の生産量は僅か700M3です。こんな少ない木曽ヒノキでは、長野県木曽谷の製材工場の経営は成り立ちません。
木曽谷でも現在は天然木曽ヒノキに替わって、長野県木曽谷に大量に植林されたヒノキ材が現在主流になっています。このヒノキも木曽ヒノキには変わりありません。しかしこの二つのヒノキは全く品質を異にする樹種です。この木曽ヒノキの呼び方は『人工木曽ヒノキ』です。
天然ヒノキの木曽以外の天然ヒノキも隣の岐阜県等にもあります。具体的数字を小生は知りませんが、ヒノキの北限が津軽海峡ですので、北は本州最北端から九州まで幅広く樹勢しているので木曽ヒノキよりは生産能力はあると思います。
最後に日本全国に植林されたヒノキがあります。四国・九州は植林木のヒノキが大量に有ります。余りに価格が安い為に最近は中国・韓国へも輸出されています。
スギも同様天然材は高品質ですが、生産数量も少ないです。しかし高級なヒノキ・スギとも現在の日本建築で使用される数量も激減しています。
総括的に言えば日本の天然林のヒノキ・スギと人工林のヒノキ・スギとは全く価値が違います。しか し一般の方は国産のヒノキ・スギの価格は非常に高いと思われている方がまだ多数だと思いますが、現在大量に余っているヒノキ・スギ材を合板製造とバイオエネルギー発電に使うように日本全国に工場が作られています。
1~7の項目は主に人工林のスギ・ヒノキについてご説明しました。ここからは広葉樹の説明をさせて頂きます。

8.かって世界一だった日本の広葉樹

日本の広葉樹の品質は昭和45年西暦1970年頃までは世界一の品質でした。当時為替レートは360円の固定相場制で、ヨーロッパへ北海道から大量に輸出していました。主にナラ材が輸出され、輸出業者は国内価格より輸出価格が高い為に大きな利潤を稼いでいました。輸出されるナラ材には輸出業者の会社のマーク・等級等が板に刷り込まれていました。一番上級材がFAS、二番目がNO1、三番目がNO2と呼ばれていましたが、その等級ルールは現在のアメリカのNHLルールより一段階上の等級が付けられていました。

9.特に良質だった北海道産広葉樹

日本の広葉樹の中でも、北海道産の広葉樹と青森以南の広葉樹は別の名前で呼ばれています。
この使い方は現在も使われています。北海道産を道産広葉樹と呼び、青森以南を内地物広葉樹と呼んでいます。
価値的には青森・秋田・岩手県の広葉樹でも、北海道産広葉樹より質が良い材もありますが、総じて北海道産の広葉樹の方が良質材です。道産の広葉樹は内地の広葉樹より品質は上級ですが、その一番の例が鉄砲虫と言われる虫が北海道産には殆ど無いことです。この鉄砲虫は原木の両木口に出ていなくても、中から出て来る可能性があって、製材すると中が鉄砲虫によって食い尽くされている原木も少なくありません。

10.様々な日本の広葉樹

地球儀を北極から見てください。同じ緯度に同じような木が存在します。ナラを例にするとアメリカ・ヨーロッパ・アジア圏に同じような木があります。日本の広葉樹と日本以外の広葉樹には大きな違いが存在します。日本のカツラ・ホオ・セン・マカバの四樹種は日本固有の樹種です。特にマカバの色が日本人に好まれるサクラ色をしています。現在マカバは超高価なために宮内庁等の超豪華絢爛の現場に使われています。
サクラと言う名前の樹種はありますが、カバサクラと言う樹種はありません。ネットにカバサクラのフローリングとして販売されていますが、サクラとカバは違う樹種です。日本でサクラと呼んで良い樹種はエゾヤマサクラとチシマサクラの2種類です。このサクラに近い材はヨーロッパにもあります。アメリカンブラックチエリー材と日本のサクラ材は違う樹種です。

11.日本の広葉樹の現状

日本の広葉樹原料は、1954年の洞爺丸台風による大量の風倒木の発生、その後の大量伐採によって北海道の森林は優良材を育む森林の機能が失われています。20年位前は、北海道には少ないながらも優良材を育む森林がありましたが、現在は非常に少なくなりました。
北海道には四つの市場が当時ありました。北見地区(展示場は留辺蕊)・帯広地区(展示場は幕別)・札幌地区(展示場は苫小牧)・旭川地区(展示場は永山)があり、各産地の特色のある樹種が伐採され出材されていました。しかし、広葉樹も政策の無い計画のまま大量に伐採されたことに国がようやく気づき、20年位前から国の政策が『森林経営から国土保全に』変更され、現在旭川の広葉樹市を除き三つの市場は閉鎖されています。その成果が100年位先には昔に近い森林に戻る可能性が出ています。

12.広葉樹の将来に向いた取り組み

現在日本国内で広葉樹の生育と伐採の研究は、東京大学の北海道演習林にて行なわれています。
演習林にある全ての広葉樹・針葉樹の立ち木は管理され、計画伐採が実行されています。計画伐採された材の優良材は1年間に一回旭川の広葉樹市に出品されています。また、優良材の下の所謂流通材も入札が実施さ れて販売されています。
木材と言う漢字2文字を簡単に分析するのに12項目も必要です。この12項目から導き出した日本の森林の現在の状態は、非常に悪いと言わざるを得ません。大昔から木材は貴重な資源であることは、明治以前の国を治める者は知っていましたが、何故か明治維新以降、森林に対する敬意が少し失われて来たのは事実だと思います。

第2条 木材の品質とは

木材の品質とは簡単に言えば木味の良さです。

1.木目

針葉樹も広葉樹も目が細かい方が優良材です。目が細かければ細かいほど素晴らしい木目が演出されます。また、最近の研究では木目の細かい木の方が曲げにも強いと言われています。

2.芯目

芯目芯目が細かいとか芯目が荒いと言う表現方法を木材業者は使います。理由は芯目の細かい木は芯節が少ない傾向にあります。ゆっくり育つと芯節が真ん中に固まって木が大きくなるので、節の少ない良い木材製品が多く取れるのです。逆に速く育つと芯目が荒く育つ可能性が高くなり、芯節があちこちに出て良い製材品の生産ができなくなるのです。

3.辺材と芯材

辺材と芯材樹種でも大きな違いがあるので、辺材と芯材には注意する必要があります。殆どの樹種は芯材(赤身)が珍重されますが、一部で辺材(シラタ)が珍重される樹種があります。シラタが珍重される樹種を正確に言うと、シナ材とイタヤカエデ材の二樹種です。シナ材もイタヤカエデ材も日本以外にもあります。基本的には地球を北極から見ると同じ緯度に同じ様な樹種があります。→アメリカのハードメープル(イタヤの親戚)、シナ材とカエデ材を除くと殆どの樹種は赤みが珍重されます。赤みの色が良いのかそうでないのかは主に産地によって変わります。
例えば日本固有の樹種のカツラ材を取り上げますと、第1条のまとめの所で取り上げた東京大学北海道演習林にもカツラ材はありますが、辺材が凄く多い質の良くないカツラしか生育していません。カツラ材は日高山脈の西側(苫小牧〜浦川地区)か東側(帯広〜白糠地区)が良質の産地です。北見地区(陸別)にも多少の良質材のカツラ材はありますが、本当のカツラ色をしているのは日高地区のカツラ材だけです。

4.赤みとシラタ

赤みが珍重される材でも赤みが張りすぎると欠点が出る材もあります。
例を出します。日高産のカツラ原木が2本あります。一本は赤味が95%有る原木、もう一本は赤味が85%の原木です。確かに見栄えは材木屋を含む殆どの方から見ると95%の方が良い様に見えますし、材木屋の取引価格も95%の方が値段は高いですが、カツラの服部というニックネームを持つ服部商店は85%の方が価格も少し安く、しかも出来た商品が良いことを知っています。理由は赤味が95%の原木はシラタと赤味の間に鳥の足跡のような模様(服部商店はその欠点をアカバッテンと呼んでいます)が出る可能性が高く、その欠点は誰が見ても無いほうが良いと思うことを知っているからです。この赤味が張りすぎている欠点は同じような赤味が珍重される原木に共通ですが、このことを知っている方は凄く少ないです。

5.木のあばれ

赤味が珍重される原木でシラタが同じ位有る樹種、でシラタの所の目の細かい木とそうでない木があれば、目の細かい木の方が圧倒的に良い。この例もカツラ材でご説明します。
例えば、直径60センチでシラタが側の6センチ位ある似通った木が2本有ったとします。一本はシラタの年輪を数えます。数えると30年有りました。もう一本は15年でした。先ほどにも述べましたが目の細かい原木の方が良く、目の荒い木の方は質が落ちることを御理解いただける方は多いと思いますが、何故なのか解らない方が殆どだと思います。木材は乾燥道中動きます。動き方は大よそ解ります。簡単に言えば元の姿に戻るのです。
例えば、捻れている原木を製材します。乾燥後、捻じれている方向に捻れます。この捻れると言う欠点は比較的解りやすいですが、シラタの所の年数が多い原木とそうでない原木のことを知っている方は比較的少ないと思います。知っている方は材木の真のプロです。シラタの年数が多い原木は年数の少ない原木に比べると乾燥後の変形が非常に少ないのです。変形が多いと最終仕上がりにプレナを掛けます。その時の削りシロが多く必用です。21ミリに荒木で製材します。良いカツラでも乾燥で約1ミリ痩せて20ミリになります。変形の大きい原木はその1ミリプラス木の暴れが出ます。暴れは多い時は3ミリ〜5ミリ位発生する場合もあります。暴れが少ない場合でも1ミリは暴れます。

仕上がり厚み:21ミリ板 → 暴れが少ない場合(18ミリ) / 暴れが多い場合(15ミリ)
この3ミリが木の暴れが理由です。暴れは原木の姿形によって引き起こされる欠点ですが、しかしそれ以外の要素によっても起きる欠点です。

6.姿と形

原木の中身は姿形でほぼ決まります。まずまずの大きさである事、姿形が美しく芯も真ん中でしかも芯目は細かく、シラタは適度に薄く、目の細かさはシラタが勿論細かく赤味の目も細かい原木が良い原木とされています。しかしこんなことを机上では言えますが、これらのファクターを全てクリアーしている木は現在ほぼ無くなったと思います。我々プロの材木屋は何時もどれかの要素に重点を置いて木を見ています。姿形も原木の品質を見る観点から大事なことですが、もう一つ大事な観点があります。それは *1元木なのか、*2二番玉なのか、それとも*3三番玉なのかによって大きく価値が違うのです。以下の話は実話です。ネットに掲載されていない情報です。

レッドオークとブラックオーク

アメリカ広葉樹原木の仲間で2番目に多いレッドオーク(写真左)には良く似たブラックオーク(写真右)が混ざっています。アメリカのサプライヤーに来ていたインドネシアのレッドオーク原木のオー ダーの検品を見たことがあるのですが、レッドオークの *43サイドクリアーベター材に、一部ブラックオークを混ぜていました。レ ッドオークは元一番玉と二番玉がそのオーダーに入っていました。割合は解りませんが多分元木が半分以上だったと思います。そしてブラックオークの元木は入っていましたが二番玉は入れていませんでした。その理由を検品している方にお聞きすると、ブラックオークのセカンド(二番玉)は外面のキズが無くても中からキズが出る可能性が非常に高く、入れるとクレームになるから入れないと説明をしていましたが、現場の本当のことが解ったと思います。服部商店のレッドオークにはブラックオークは決して混ざっていません。その見分け方も現地で教わってきました。

7.アンコについて *5

アンコについてホワイトオークは大きく分けて二つの種類がありますが、現地挽きには両方共混入しています。一般に現地挽きのホワイトオーク材に多く混じっているのがチェスナットオークです。
服部商店が扱っているアメリカの現地挽きにも多少混ざっています。チェスナットオークは樽にならないホワイトオークです。(水漏れを起こします)ホワイトオークは一般に20種類程度の種類があるそうです。確かに木の肌、つまり皮の違いを見れば解ります。しかし20種類を大きく二つに分ける要素があります。それは乾燥後木口に出る欠点です。日本では通称アンコと呼ばれている欠点です。大手家具メーカーはホワイトオークの剥ぎのテーブルトップを大量に作っています。その剥いだテーブルトップの木口にその欠点は出るのです。大手家具メーカーはそのアンコの欠点の無い商品を入れるように納材業者に求めていますが、それは不可能です。そして大量に使うと言うことはその原料は製材グレードの品質の材です。

8.グレードの説明

アメリカ - 原木のグレードアメリカでは原木のグレードを二つに大きく分けています。 *6ベニヤグレード*7ソーミルグレードです。ベニヤグレードの原木価格は高いです。従ってそれなりの仕訳があります。
しかしソーミルグレードは量が多い為にそんなに細かい仕分けは出来ていません。服部商店はホワイトオークの原木→(最高のホワイトオーク原木です。木口にアンコの状態にはな りませんでした)の製材を3年ほど前から初めています。最初アンコとはどう言うことから出来るのか、それは100%外せるのか、色んなチャレンジをしました。そしてある結論に達しました。それが木味の良いホワイトオークの原木なら、アンコと呼ばれる欠点は80%近く外せる欠点だと言うことです。しかし日本に輸入されたホワイトオーク原木からアンコと呼ばれる欠点の入っていない原木をチョイスすることは不可能です。それは現地でフレッシュカットした原木を見る以外に方法がないことが解ったからです。
木味=色です。木味の良い製材品を使用することをお勧めします。理由は、板1枚を全て使い切る仕事ならともかく、端材が残るのは常です。その端材は良い木味の商品なら使い回しが出来ます。その使い回しが出来ることこそが無垢材の最高の良さなのです。
食べる物で考えてください。キャベツ1個買いました。その内3分の2を使いお好み焼きを作りました。残りは冷蔵庫で保存し明日ステーキに添えるキャベツと使おうとします。絶対に大事に使いきることを前提に調理します。こんな当たり前のことを材木にも置き換えることは普通のことではありませんか。食べ物の場合、新鮮さは重要な要素です。乾燥材の場合は冷蔵庫で保管する必要はありませんが、乾燥材と言っても劣悪な環境なら問題は生じます。雨風が凌げる環境なら質の劣化が進むことは少ないと思います。その時木味の良い商品の端材なら、狂いも少ないし違う作品を作る時の心の入り方も違うはずです。

第3条 材木業者の見分け方とは

材木屋の姿勢で木材の品質は簡単に解ります。

1.価格の考え方

流通量の激減が材木屋の立ち位置を大きく変化させてきていることは事実です。
何故そうなったのかを検証することから始めないと本当のことは解らないので検証します。
身の回りのすべての流通が変化してきていることは誰も実感しているはずです。しかし材木屋にはまだ昔の商いが良かった頃のことが脳裏から離れない方が大勢いることも事実です。
服部商店は全ての御客様に公平です。しかしエンドユーザーと流通業者の材木屋が同じ仕様で同じ量の引き合いがあった場合、公平な価格とは如何なる価格提示が正しいのかを真剣に考えました。結論は『同一引き合い(量も仕様も同じ)の場合同一価格です』です。この価格提示の方法を取らず、今でも住宅部材の流通価格は二重価格です。二重価格とはエンドユーザーの価格がパンフレットの付属価格表に掲載されています。希望小売価格と言う名前で。しかし現実には、工務店の大小によって価格が違うのです。1か月に500棟以上施工するデベロッパーと1年に2棟くらいしか施工できない大工さんなら、当然価格差ができるのは解ります。それは工業化商品を扱っているので 1個作るのと500個作るのでは当然製造コストは500個の方が断然安くなるはずです。しかし現実には今の住宅における木材の使用量は、30年前の建築に比べ激減しています。従って生き残りを図る材木屋も木以外の部材、つまり工業化した住宅部材の販売を手掛けるのです。その結果、店に置く材木の量は激減し、材木屋の事務所には大手建材メーカーのカタログばかりになっているのです。そんな材木屋に、細かい材木の注文をしたって良い商品が適正価格でエンドユーザーさんの手元に来るはずなど無いのです。

2.流通革命

日本国内で年寄から若人まで名前を知っている企業は多くありますが、その中でも我々が参考にしたら良い企業はユニクロだと思います。ユニクロは小売業ですが、日本特有の複雑な流通を除いた販売形態を取っています。外部の専門工場に自社ブランドを委託生産し、全ての生産物を買い取って自社のお店で販売する形態です。従って値段は自由に付けられ、消費者が買う購入単価も下がります。
服部商店も同じような考えで会社の構造改革『顔の見える商いを行ないたい』を進めています。

3.業界は

古い木材業の販売システムにあまりにしがみついた結果、木材の流通での役割等の本来すべきことが疎かになり、消費者目線で見られた時、余りに透明度が低い閉鎖された業界になってしまったからホームセンター・パワービルダーに御客様を取られたのではないでしょうか。10年くらい前から起こってきたことを理解せずに商いを続けても、焼け石に水の状態から何時までも脱皮できず、最後に自然淘汰で消滅してしまう業界になってしまう可能性が大いにあると考えています。弊社の取り組んでいる全てのことが消費者目線で見られた時、決して100点ではありませんが、それを目指して行く姿勢に何ら変わりはありません。

4.服部商店の方針

服部商店は、日本全国にある他の製材工場と違う点が一杯あります。その特徴を記載します。

  • 広葉樹と針葉樹の両方を製材しています。
  • 広葉樹原木の原木を直接アメリカから仕入しています。
  • 広葉樹製材品もアメリカシッパーから仕入しています。
  • 国内産広葉樹を扱っています。
  • 木に優しい天然乾燥が出来るスペースと人工乾燥機械を併設しています。
  • 木に優しい製材方法と木に優しい桟干しをしています。
  • 原木の製材方法が違います。
  • 製材している原木のグレードはいわゆるベニヤグレードです。
  • 多種多様な品揃えをしています。

数を数えられない他社との差別化が服部商店の方針ですが、最も大事にすることは、普通にするという言葉です。普通と言う漢字2文字は、外部環境の変化に対して常に取り組んでいこうと言う意味です。
その結果、他社には無い商品の提供が出来るようになり、結果日本全国の方から御注文を頂ける様になりましたが、まだまだ服部商店のする仕事は山の様にあると思っていますので精進して頑張ります。

第4条 アマチュアが木製品を作る時の注意点

良い木材におんぶされなさい。

1.なぜホームセンターで木を選ぶのか

アマチュアが第一に作品を作る為に材木を探しに行くのは、ホームセンターだと思います。
その方法は決して間違っていない選択だと思います。ホームセンターはバーコード管理をしている為に *8規格品しか扱えないのです。しかし、本当は木製品が必要な方は千差万別の作品が作りたいはずなので、千差万別の木材が欲しいと思います。しかし、そんな簡単に適材は見つからないと思います。また、こずかいの中でやりくりせざるを得ないのが常だと思いますし、簡単な木製品を作ろうとしても小さな機械工具も必要になります。機械は使い方を誤ると大けがにも繋がるので、安全に使える機械を購入するのが一番だと思います。機械を購入して、すぐに木製品の製作に入ろうとしても資金の問題が生じます。そこで小生が考えたのが端材の販売です。凄く手間の掛かる作業ですが、もしこの作業を疎かにすると消費者の皆様に本当の無垢材の良さを味わって頂けるチャンスをのがして、結局余り良くないホームセンターの商品を購入してしまうことになると思います。

2.アマチュアほど良い木材を選んで

端材の御購入→板1枚の御購入→木製品を作るのが趣味になり→本当の木の家が建てたくなる。
上のスケジュールの様に進むことが一番の理想です。簡単に上手く行く筈は無いとは思いますが、端材を販売するにも一つの哲学が必要です。哲学なくして商い無し、と言う考えを持っています。
誤解しないで下さい。服部商店は決して住宅部門は手がけませんし、素晴らしい建築の設計をしている優秀な多くの建築士さんと大勢知合いですが、その建築士さんをご紹介する事業も今は全く考えていません。しかし、このまま手をこまねいて何もしていなかったら、素晴らしい無垢材を多くの消費者の皆様に味わって頂けるチャンスが増えないと考えています。そのためにも端材を取り扱う意味があるのです。
しかし、端材と言っても一般の端材と服部商店の端材は違います。一般の端材のイメージは格安であって品質も落ちる材料のことを意味しています。そして、それを利用して作品を作ろうと思っても、アマチュアでは無理です。何故か。理由は簡単。材質が悪いからです。良い端材とは彫刻材をイメージして頂ければ解ります。彫刻にはカツラ・シナ・ホオの樹種がお勧めですが、この3樹種なら何でも良いとは言えません。本当は赤味が多く柾目か、もしくは板目でも材質が大人しい表情の木が良いのです。
本来は服部商店の扱っている端材は、他社の木材業者から見ると端材ではないと見える場合があると思っています。しかし、そんな理屈『これは端材になるがこれはならない』の議論はどうでも良いのです。アマチュアが木製品を作りたいと思って取り組む場合は、良質材を使ってください。プロなら多少品質の落ちる材でも作りたい作品は作れますが、木は常に生きています。と言うことは作り手に必ず反応するということです。プロなら如何なる反応にも対応出来ますが、アマチュアでは無理です。良い材質の木材の反応は凄く大人しいです。従って怪我をする可能性も少なくなりより、楽しい趣味になると思います。

第5条 正しい木材の呼び名を使ってください

かっこ良い言葉・横文字に惑わさないでください。

溢れる間違った木材の呼び名

1.あふれる間違った呼び名

レッドオーク・ホワイトオーク・ホワイトアッシュと言う呼び名は正しい呼び方です。しかしアジアウォールナットと言う名前の商品がネットで販売されているのを見かけたことがあるのですが、こんな名前の樹種はありません。多分クルミ材のことだと思いますが、この様な事例は、山の様にネットに掲載されていることが凄く残念です。

2.正しい表示の証

木材には正しく表示しなさいというルールが現に存在します。しかし、そのルールは木材表示推進協議会に入会している業者だけです。もちろん服部商店はこの会に入会しています。北海道にて開催されている広葉樹の銘木市の名前は北海道産広葉樹銘木市になっていますが、一部の業者が東北の内地材のホオ・セン・カツラ・サクラ等を出品しています。この出品者の方達の精神状態を疑います。食物に偽装が有れば、多分この方達も文句を言うと思ますが、自分たちの行なっていることは全く正しいと思っているのでしょうか。

ムク材 木材表示推進協議会 会員 No.261402
http://fipcl.jp

FIPC 木材表示推進協議会 会員

第6条 良質材の意味

簡単に言えば木味の良い木のことを意味します。

1.グレード

アメリ材の原木で良質材とそうでない材の分け方は単純に言えば、ベニヤグレードの原木かそれともソーミルグレードの原木かです。もちろん、前者が良質材です。

2.産地

産地による違い。ブラックチエリー材を例にします。ペンシルバニア(写真左)は最高の産地です。
バージニア(写真右)は2番手の産地です。

材木屋の真実 - 良質材の意味:産地

3.樹齢

原木の大きさによる違いです。
20インチアップの原木か否かも良質材を決めるファクターになります。
世界的に原木の大きさは木の樹齢です。従って年数が経っている方が太いです。太くなるのに時間が掛ります。
以下はアメリカのヤードの写真です。径級とスタイルによって価格は全て違います。

材木屋の真実 - 良質材の意味:樹齢

4.目の細かさ

目の細かさも重要なファクターです。
ごく一部の木(チーク:写真左)を除いて目の荒い木はだめです。
良いチーク材の芯は締まっていますが、成長していく過程で目が細かければヌカメと言って色が黒くなる傾向があります。しかし少し目が荒いと色鮮やかなライトカラーになります。だから、チーク材だけは目が粗い方が良いのです。もちろん服部商店のチーク材はライトカラーがメインです。目の細かい木を広葉樹にてご説明することは難しいので針葉樹にて説明します。スプルース(写真右)は樹齢500年生です。目の細かさは言うまでもありません。この様な原木で楽器を作れば、最高の音が聞こえると思います。

材木屋の真実 - 良質材の意味:目の細かさ

第7条 木材を安く買う方法

1.店

まずお店選びが大事だと思います。一軒のお店だけで購入するのは危険です。数軒のお店を回ってください。そして事務所では無く木場を見てください。豊富な在庫が有れば、まず及第点のお店だと思います。

2.相性

自分に合ったお店なのかも判断してください。スギ・ヒノキが必要な方はその専門店に、広葉樹が欲しい方はその専門店に行くことをお勧めします。

3.選び方

製作したい作品に合った木を選ぶより、多少妥協して木に作品を合わせてください。
例えば長さ1800ミリ厚み・35ミリ巾・800ミリの剥ぎでテーブルトップを作りたい場合、例えば柾目4枚の均等剥ぎで作る方を希望されるとします。長さと厚みはほぼ希望どおりになります。しかし巾を板目3枚の巾色々でする場合の方が安く上がる場合があるのです。その方が歩留り良くお値段も安くなるのです。
以上の様なことを相談出来るお店なのか、それとも色んなアイテムの商品を取り揃えているのか等を検討してお店を選んでください。

専門用語の説明

*1 元木・*2 二番玉・*3 三番玉

元木・二番玉・三番玉とは

*4 3サイド・クリアー

原木は丸いがあえて四角と見なす。
4面共キズが無いのが、4サイドクリアー。3面にキズが無いのが、3サイドクリアー。2面にキズが無いのが、2サイドクリアー。1面のみキズが無いのが、1サイドクリアー

3サイドクリアー

*5 アンコ
木口に変色が残る欠点をアンコと呼ぶ。
ホワイトオーク独特の欠点です。テーブルトップの剥ぎ合わせの木口面に発生しやすすい欠点です。

*6 ベニヤ・グレード と *7 ソーミル・グレード
ベニア・グレードとは元木で3サイドクリアーベター材の原木をさす。突板を取る最高品質の材です。ソーミル(製材用)グレードはベニアグレード以外の品質の材をさす。

*8 規格品と非規格品
長さ・幅・厚みが統一された製材品を言う。現在集成材が規格品の代表的製品です。規格品はバーコード管理がしやすく大規模な販売店に合う商品です。それ以外の商品を非規格品です。