服部新聞 平成29年4月5日 131号
旭川銘木市・アメリカ材の産地比較・ロシア材
旭川銘木市
2017年3月30日に北海道旭川にて、特別な催しが開催されました。昭和42年に始まって現在まで開催続けている広葉樹専門市の50周年記念のパーティ-でした。昭和木材の高橋理事長の挨拶(写真・上)から始まり、官僚の挨拶そして第1回目から参加されている名古屋の川岸氏(写真・下)の祝辞と続き、参加者の懇親会と続き約2時間の宴会は終了しました。
服部新聞で何度も取り上げましたが、北海道には四つの産地が有り特徴の有る広葉樹原木の専門市が有ったのですが、過伐採がたたり旭川を除く、東北海道素材生産協同組合(帯広)が解散し北見地方木材林産協同組合(留辺蕊)、札幌地方木材林産協同組合(苫小牧)も事実上市を開催する事が不可能になってしまったのです。
それは、持続可能な森林経営をしてこなかった責任を我々木材業界全体として享受し未来の子供たちに豊かな森林から享受できる自然の恵みを引き継いで行く責任があると思っています。この席に臨席した官僚は1年間で日本国内の森林資源は増えていますといっていましたが、それは人工林のスギ・ヒノキだけです。服部商店が扱っている広葉樹の正確な数字は、20年位前から始まった大幅な伐採制限で全体の量の減少には歯止めは掛かったと思います。優良広葉樹資源を排出できる森林に戻りつつあるとは思いますが、まだまだ年数を要すると思います。
特に戦後40年間に行なった罪(過伐採・違法伐採)は元の自然に近い森林に戻す為に必要な時間は倍以上の80年以上の年数は掛かると思います。
50年間市を開催続けた事はおめでたいことでは有りますが、将来とも旭川の市に依存していれば服部商店の将来は無い事は解っています。しかし、御客様の為に旭川の市を活用していこうと思っています。
今の服部商店は、無垢材の小売販売と言う営業スタイルですが、亡き父親が健在な14年以前はカツラの服部商店でした。カツラ材の最高級材の産地は日高です。つまり苫小牧地区ですが、苫小牧が無い現在でも少量ですが日高地区から搬出された優良なカツラ材は旭川の銘木市に出品されます。彫刻等のどうしてもカツラ材が必要な御客様には同市に100%頼らざるを得ません。又国内産しかない樹種ホオ・センも同市に頼りますが、ナラ系樹種に関しては、アメリカ材のホワイトオーク・レッドオークとの兼ね合いの中でどうしても価格的にも、品質的にもコストパフォーマンスが有れば、国内産ナラ・ロシア産ナラは同市に頼りますが、そのウエイトは品質と価格と供給量のバランスによって決定しようと思っています。又どうしても品質・価格・量の3つのバランスが御客様目線で問題が生じるようになれば、最後のフロンティアのヨーロッパ材を扱いたいと思っています。
アメリカ材の産地比較
ホワイトオーク原木の一番良い産地はオハイオ・インディアナ・エリアです。しかしこの地域は世界中のバイヤーが大挙して押し寄せています。従って他の産地に比べて凄く高い価格になっています。その為に小生の大事なアメリカの仕入れ先の日本人スタッフの心配りのメールを頂きましたのでそのメールと現地の写真、製材した感じ等の事を纏めて今月号の一番大きな記事にします。
下記はアメリカの仕入れ先の日本人スタッフからのメールです。
服部様
いつもお世話になっております。お知らせありがとうございます。
因みに今回のバージニアのWオークの色/品質はオハイオと比べ製材してどのような違いがありますでしょうか?
通常、オハイオ・インディアナのWオークがベストであると言われておりますがバージニアでもあの土場のWオークは色が白くて良いものが集まりますので、実際に両方を挽いてみた服部様のご意見をお聞きしたく。よろしくお願いします。
ウイスコンシン・エリアのホワイトオーク原木オハイオ・エリアのホワイトオーク原木
3枚の写真を撮影した天気は違います。ウイスコンシンは雪でした。オハイオは雨でした。バージニアは快晴でした。従って写真映りが違いますが、何となくオハイオ・エリアのホワイトオークが柔らかそうに見えませんか。製材時の鋸通りから判断出来る材質の固さは3つの産地とも余り変わりは有りませんが、インスピレーションと言うかあくまで感覚の世界ですが、オハイオの材質が柔らかいのです。
これが最高品質の証拠なのです。
バージニア・エリアのホワイトオーク原木木味が最高で最高級の産地の証明です。
木味が良いと言う表現を多くの材木業者は日常会話で使います。木味=色ですが、これも単なる感じの表現です。しかしこの表現ではエンドユーザーに開かれた材木屋の服部商店の答えにはならないのではないかと考えました。そして企業秘密も含まれていますので書ける範囲の中で下記に書きます。
まず最初に製材したのはバージニア・エリアでした。この産地のホワイトオークを1コンテナ製材するのは初めてでした。2~3本程度は過去に製材したことが有るので少しは感じは解っていましたが、正直頭の中は白紙の状態で製材しました。26本全てベニアグレードですので、ある程度の商品が出来上がるだろうなとは考えながら製材しました。アメリカ広葉樹原木の仕入れの鉄則(企業秘密ですので公開は出来ません)は順守しなければならない事は確信しました。まずまずの出来でした。次に製材したのはウイシコンシン・エリアのホワイトオーク原木です。昨年から引き続き仕入しているシッパーの材質なので大体解っていました。この産地もアメリカ広葉樹原木の仕入れの鉄則(企業秘密ですので公開は出来ません)は順守しなければならない事は確信しました。まずまずの出来でした。
最後に製材したのがオハイオ・エリアのホワイトオーク原木でした。3つの産地の単価の事は何も書いていなかったので下記に書きます。企業秘密なので具体的に書けないので係数で書きます。
一番高いのがオハイオ・エリアです。この産地を100とします。2番目がウイスコンシン・エリアです。この産地の係数は68です。3番目がバージニア・エリアです。この産地は65です。
この数字に比例して販売単価にスライドはしません。植物検疫等に引っかかると燻蒸費用等が嵩む為にコストが上昇します。3つの産地の材でバージニア材だけが植物検疫に引っかかりました。燻蒸費用は7万円かかりましたので一番安い価格の材が原価も安いとはならなかった典型的な事象です。
あくまで小生の感じを書きます。材質の出来上がりを色で表現します。オハイオは透き通る様なホワイト色だと思います。ウイスコンシンはオハイオの白さにほんの少し薄い黄色をアレンジしたような色です。バージニアは、オハイオの白さに少し黄色をアレンジしたような色です。
乾燥すると多少は汚れたりしますので、中身の色を知る時は削る必要が有ります。そこで3つの産地を自動カンナで削って並べれば確かに色合いの違いは一目瞭然に解ります。
服部商店は今期製材したアメリカ材には州の表示も合わせて行います。又3つの産地の材を混ぜて販売は決して行いません。御客様の方のご希望サイズ・ご希望数量が弊社の在庫数量と上手くマッチング出来ない場合、御客様の方で複数の産地の材をご使用する場合も問題ないと考えています。
それは何の為に分けて販売するのと聞かれたら、お答えする答えは、当たり前の一言です。
お肉で言えば黒毛和牛の松坂牛とホルスタイン牛と分けて販売されていますが、それと同じ事をするだけです。コストとは言え100の係数の商品と70の係数の商品を混ぜて販売する行為は、道徳的に駄目です。もっと言えばその行為をすることで、アメリカの仕入れ先にも強い事を言えなくなるのです。
コストが高いホワイトオークをふんだんに使える現場とそうでない現場が有る事は色んな事情で解ります。例えば最高級ホテルと大衆ホテルが有ります。宿泊代金も違います。従って当然使い分けしたいと思うのがユーザー様のご希望だと思います。その段階で我々材木屋が複数の提案が有れば設計段階から変更せざるを得ない現場でも、ふんだんに無垢材を使って頂けると思います。
アメリカンブラックチエリー材も複数の産地の材を買いつけています。一番良い産地はペンシルバニア(写真右)です。2番目にに良い産地は解りませんが、ウイスコンシンの同材も買いつけてきました。ペンシルバニアのアメリカンブラックチエリーを100と言う係数にするとウイシコンシンは65の係数になります。服部新聞を書いている現在はウイスコンシンのアメリカンブラックチエリー材しか製材していないのでペンシルバニアの材とどの程度違うかは書けませんが、日本の牛肉と同じ様なブランド分けをして販売します。
アメリカの森林は循環型森林です。超特選木は多少減りましたが、産地云々を多少外せばまだまだ良い商品を提供出来る能力はあります。確かに港頭在庫が少なくなったとはいえ、まだまだ多くの材は流通しています。しかし高品質材の流通量はめっきり減ったと思います。服部商店は成熟社会では、高品質材を適性価格で必要な量を提供すべく今後も頑張っていきます。
新しい仲間たち
最近の超人手不足と将来の生産性向上の為に何をするべきかと言う問いに中々明確な回答が出ないまま一昨年からずっと悩んできましたが、一つの答えを導き出すには設備投資以外方法はないと昨年の秋口に一定の結論を出しました。最初に3.5トントラックを買い替え次に乗用車を下取りに出し軽四トラックを購入し最後に4.5トン・フオークリフトを新規に購入しました。
時間をお金で買うと言う考え方は、良い商品を提供するために生産性を挙げる事に繋がります。そうしなければ従業員のお給料も上げられません。従業員の幸福度が向上すると良い従業員を集める事が容易になります。それは再び生産性の向上に繋がり良い循環が出来上がると考えています。
ロシア材
ロシア材が入荷しました。北海道には初めての入荷です。そうかと言って全部で250M3程度ですので、5年ほど以前と比較すると一回の銘木市の出品数量の上ではまずまずの数字ですが1年間に数回程度しか出品されなくなったのです。
以前は毎回の様に出品されていましたので、旭川の銘木市の主な出品材になっていました。
しかし現在のロシア材のナラ・タモはワシントン条約に指定されている為に、厳格に伐採・輸出に制限処置が実施されているのですが、同処置はロシア政府の正しい政策だと小生は思います。もし制限が遅れれば日本の森林と同じようになりさがってしまうのです。
ロシアの森林を荒廃させたのは中国人です。華僑とロシアのマフィアが組んで違法伐採を長年続けてきたのです。多い時は法律で決められていた輸出数量の10倍以上国境を渡った材があるとのことです。
そうかと言って100%日本人にコンプライアンスが有ったのでは有りません。中国に入荷した原木の製材品から作られた多くの木製品の完成品と加工材が日本に輸入されていました。それは身近の100円ショップの商品も過去にあったと思います。
いずれにせよ現在のロシア材の状況は現地で厳格に伐採から輸出まで管理されていますので、量的には期待出来ませんが、日本国内の優良なナラ・タモを必要としているマーケットの商品ラインナップの一つとして大事に流通すれば良いのだろうと思います。なお同市のロシア材の価格は国内の消費マーケットが、今ひとつ動きが悪いのに昨年比20%以上値上がりしていました。
小生はタモ4本とナラ8本を買い付けしました。
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