服部新聞 平成29年7月5日 134号

姫路城見学・広葉樹原木製材総括・北海道研修

姫路城見学

6月4日と5日の二日間の日程で兵庫県に材木屋の親睦旅行で出かけました。この会の小生の参加は父親が亡くなってからですから10回程度になります。1年に1回6月の第一日曜とその翌日がこの会が創立した当時から引きつがれているスケジュールだと聞いています。
ただこの会もご多分に漏れず会員は最盛期から比較すると4分の1に縮小しました。高齢化・倒産・廃業・等材木屋に吹いている風は物凄い暴風雨です。しかし今年も10数社の参加者が有りました。この10数社は頑張ってきた証拠だと思います。

姫路城見学

姫路城見学で思った事は木材は素晴らしい。しかし現実には消費者から見るとそれほど近い存在ではない。どこに問題が有るのだろう。それは業界が持っている悪い癖か。それとも何か。そのことは解りませんし、現実に毎日生きていくために100%理想を追えない事も解っています。しかしこのままこの穴の開いた材木丸に乗り続けるのか、と自分に問うと、穴の開いてない船に乗り換える必要が絶対に有ります。
どうしたら乗り換えられるのか。その為には自分たちは何者か。本当に消費者から必要とされているのか。プロフッショナルなのか。こんな当たり前の事に少しでも気が付いて日頃仕事しているのか。そのことが我々材木業界全体に問われているのだと小生は考えています。

建売住宅

右の写真は小生の近所に建てられている建売住宅ですが、構造材は集成が100%です。土台から柱・梁まで全てです。超人手不足の中で仕方がないと考えるのか、それとも違う考え方が存在するのかと思うと、工務店の社長の言った一言『家1軒建てるのに約40業種必要とのこと』はズキッと来ます。小生の場合一般のサラリーマンより報酬は少しは高いです。報酬が有る為に選択肢が多く存在します。しかし現在の日本はグルーバル化の中にいます。お金は大企業等の一部に集中して集まりますが、それは日本全体の企業数から見ると5%以下だと思います。我々庶民が出来る事は少しでも安い良い商品を見つけ出すことに他ならないと考えています。服部商店はもう業態転換を益々進めていきます。服部商店に来てください。優秀な女性のスタッフが頑張っています。彼女たちは事務員では有りません。営業職です。変化し続ける以外に生き残れるチャンスはないと思っています。
改革なくして未来はない。どこかで聞いたフレーズですが、この言葉を実行し続けます。

今シーズンの広葉樹原木の製材総括

昨年の秋から始まった広葉樹原木の製材は6月15日のロシア産ナラ原木で全ての製材が終了しました。
総本数は363本です。初めに感想から言うと『しんどかった』です。肉体的にも、精神的にも、金銭的にも疲れました。
現在の服部商店の主な仕入れ商品の広葉樹原木は国内仕入・海外仕入に共にキャッシュです。海外仕入はL/Cでは無く、送金です。送金を確認するまで絶対に荷物を動かせてくれません。『直輸入業者の悩みです。以前は日本国内の小手の商社を使っていましたので、服部商店に運んで荷物を確認してから支払いが出来るので資金的には楽でした。しかし今の商社の連中は粗悪品をわざと混ぜる悪い癖が抜けきっていないために、取引先の減少→服部商店が商社経由から直接仕入れに転換した。又は取引先の倒産でかえって自分の首を絞める結果になっているのに気が付いていません。』唯一締日ベースの支払いが可能なのは、コンテナにかかる運賃及び、鋸の目立て賃と社員のお給料だけです。
潤沢なキャッシュフローが無いと今の優良な広葉樹製材品をお届けできない仕組みになっています。アメリカ出張の場合二人で航空運賃と現地滞在費用を含めると1週間の経費はざっと100万円になります。
服部商店の商品全て、御客様に100%の信頼感が有るのか、解りませんが小生は100%の信頼感を目指しています。勿論何時も100点を御客様から得ているとは思っていませんが、それに近い事をしています。お金の話ばかりしていますが、その話無しには語れないので最初に書きました。
材の製材の事の話は以下『製材とは筋書きの無いドラマ』です。1本のロシア産ナラ原木の製材をお話します。
3月末に北海道旭川の広葉樹銘木市でバラエティに富んだ価格のロシア材ナラ原木を7本買いつけました。単価は秘密なので口外出来ませんが、上級材から中級材の単価比較は30%の違いが有ります。製材の順番は上級材原木を優先的に製材するのではなく、自信の有る原木から製材していきます。と言う事は最後に自信の無い原木が必然的に残るのです。この作業はどの樹種でも同じですが、今回は少し違っていました。勿論今シーズンの最後の原木なのでやれやれと言う気持ちが有りましたが、最後は特に注意して製材をしなさいと言う亡き父親からの言葉が、聞こえてきたのかも知れません。
まずまずの外観が良い6本のナラ原木の出来は普通だったと思います。最後の1本は少し曲がった原木でした。そして外面にキズが有りました。キズとは肌に有る葉節です。その葉節は市の展示場で『北海道の最近の広葉樹市の担当者は自分のその場の自分の成績しか考えないので、原木展示のモラル→原木の悪い面を必ず上において御客さんが見える状態にしておく事を全く無視しています。その結果が全体として広葉樹業界のモラル向上に繋がっていません。特に大口出品者の材の下見は注意しています。』置かれていた位置は全く見えない所に有りました。服部商店の本社製材工場に引き取ってみると、『こんな木だったのかと思い、ショックでした。』落ち込みました。
他人から見ると小生が買いつけ出来た原木の製材は順調にしているように見えますが、そんな事は絶対に有り得ません。現実に絵に描いた原木はそうそう多く有りません。特に北海道旭川の銘木市の原木は何度も理事長に『原木の短所を見えるようにしてください。節等の欠点は見える上にして下さい。』要請はしていますが、全く改善されることは有りません。この点はアメリカ材を現地で買いつけする時の方が原木買い付け時の検品はスムーズです。
こんな頭を悩ますロシア産ナラ原木(長さ3.8メーター直径54センチ)だから、頭が一番すっきりしている朝一番に製材しました。この原木の製材時の工程を順番を下記に書きます。

  1. 外面に見えている葉節は外面全部に有るのか?→下見時見えなかった下に固まっている。
  2. この葉節の深さを調べる→深い葉節は少ない。全てではないが肌から少しで止まる可能性が有る。
  3. 買いつけた原木の長さの確認→買いつけの長さは3.8メーターですが実寸3.95メーター有る。
  4. 曲りの程度を見るので長いまま製材機械に乗せました。→長いまま何とか製材出来そう。
  5. 長いまま割りました。→芯は多少曲がっていましたが、木味は7本中1番良かった。
  6. 製材の確認→長いまま製材する方が良いか、長さを切って2本にする方が良いのか。
  7. 切った時のプラスとマイナス確認→3.8メーター1枚と2.0メータと1.9メーター1枚の合計の単価確認。
  8. 切った時のプラスとマイナス確認→3.8メーター1枚と2.0メータと1.9メーター1枚の合計の歩留り確認。

1~8までの事を、この新聞に書く為に一つずつの記憶を辿りながら書いていますが、この判断を瞬間的に行いました。多分判断時間は1分もかかっていないと思います。作業時間は6本の原木を製材に要したより20%位の多い労働はしたと思いますが、出来栄えは結果から見ると7本中1番の出来だったと思います。
昔から言い伝えられている服部商店の原木買いつけの格言を下記に書きます。
惚れて買う原木は儲からない。冷静に買えた原木の方が出来も良く御客様にも喜ばれる。景色を買うな、原木を買うのである。自分は解らない、従って他人も解らないと思え。入札の場合初めに自分が特に欲しい原木が有れば最初に取れ、欲しい原木がまずまずの出品量が出ている場合、相場を見ながら入札出来ると思っても、自分で入札の札を入れない原木の下見も価格設定をして入札に参加しなさい。ただし欲しくない原木は自分なりの価格設定をしていても札は絶対に入れてはいけない。そこでの価格差が少ない場合相場感が有る可能性が出来ている。しかし相場感は丸一日朝から夜の遅い時間帯までの入札では持たない。だから自分が扱っていない原木でも、日頃から相場観を養っていれば、日本中の御客様の為に正しい目利き技術を発揮できる。
この1本のロシア産ナラ原木で、色んな話が出来たと思います。363本全てとこの様な話が出来ると原木の製材ミスは起こりませんが、こんな事は100本に1本程度しかないと思います。残り362本とも話は出来ましたが、こんな込み入った話は出来なかったと思います。こんな事を半年間やり続けてきました。
今期の製材数量は昨年より20%多いです。しかも終了時が昨年より2週間以上早かったと言う事は、服部商店全社員の頑張り無くしては勿論出来ません。凄く感謝しています。
私は今年10月で59歳になります。この1年間で凄く老化したのではないかと思います。頭の方は良く回転はしますが、体が付いて行かなくなってしまっています。少し膝を痛めましたが、この程度の作業量で痛めるのを、知人に聞いたところ彼は『加齢』だから仕方がないと愛想の無い一言を小生の耳元でささやきました。彼は大学時代スポーツに励んでいました。しかし小生は、車の運転とアルバイトが主な今では考えられない不良な大学生でした。

ところで現在の無垢材のトレンドはアメリカ材のブラックウオールナットとホワイトオーク材です。私もライバルの材木屋と競争していますので負けないようにトレンドを追っかけていますが、今シーズンの反省は同じ樹種を追い過ぎているのではないかと反省しています。
国内産広葉樹資源で樹種に関係なく良質材の供給は先々も好転する事は絶対に有りませんが、現在の材木屋の体質を考えると、現在最も売れる樹種を追いかけます。多分に漏れず小生も追っかけていますが、そのこと自体が間違っているのです。競争の激しい樹種は仕入れ競争になります。当然品質も競争が激しければ激しいほどギリギリの品質にならざるを得ません。しかしユーザーさんはそんな事は知り得ません。品質に関して十二分に説明は致しますが、十二分に伝わらない場合も出てくると思います。
現在の北海道の広葉樹原料の需給バランスは全体で言えば完全に良質不足です。しかし全ての樹種か年間を通して絶好の仕入れチャンス『良質材を上手く買える時期が有ります』は実際有ります。しかしそれは何時なのかは解りません。その為には一番最初に申し上げた潤沢なキャッシュフローが必要なのです。
昨年の秋口に神代ニレの良質材(おひょう)が2本出品されていました。2本の内良い方は取られ少し品質的に落ちる材は買えましたが、国内産広葉樹についてもう少し積極的な考え方が有れば2本とも手に入れられたと思いますが、12月からの大口仕入れが控えているので、仕入れの予算上1本しか買えなかったのです。実際今シーズンこの2本以上の高品質の神代ニレ材の出品は有りませんでした。
今シーズンも新しい樹種にチャレンジしました。国内産のカシ材、アメリカ産のバーズアイメープル材です。僅か2樹種ですが、今後も続けて新しい樹種に挑戦します。
もしこの行いを辞める時が有れば、その時は小生が材木屋から撤退する時です。今の所多少の体の痛みは有りますが、決してマイナス思考になっていません。

北海道・研修

6月22日~25日の日程で服部商店の研修旅行を行いました。目的地が北海道にしたのは20年ぶりだと思います。当時の服部商店の商いのメイン商品はカツラ材でした。そのカツラ材が種々の要素で集まりにくくなっていました。それを少しでも打開しようと言う試みも有って研修を兼ねて北海道に視察に出かけのですが、広葉樹製材工場の閉鎖は想像をはるかに超えるスピードでした。
服部商店が生き延びる事が可能だとすれば、服部商店の掲げている経営方針を貫き通した時だけだと考えています。その方針は『日本一の品質の材を扱い御客様に最高の物を提供する。家族的な経営をめざす。社員の家族全員が会社の財産である。』こうです。
この表現の中に有る日本一とは何か。それは社員一人一人が本当に確信を持っているのか。今やっている事をただ継続しているだけだったら、それは日本一に値しない。外部環境の変化の予測は事実上出来ない。しかし外部環境の変化についていく事は可能である。その一つの方法が潤沢なキャッシュフローかもしれない。服部商店の材の管理方法と同業他社との違いは何か。もしその違いが有っても価格差が倍も有ったら、少し粗悪な品質の商品でも必ず価格が安い材に御客様が流れるのは当然のことだ。服部商店の提供する商品の中で日本国内全体の材木業者と競争する材と、全く競争しない商品が有る。片方だけ日本一の品質で良いのか。両方とも日本一でないといけないのか。答えは簡単両方とも日本一でないと駄目。
来年以降も同じ作業をして良い所と、改善する所と分けて考える必要が必ず有ります。そのヒントは小生の頭の中には有りますが、社員全体で共有しているかと聞かれれば、間違いなく疑問が有ります。
その疑問を埋める為の研修が今回の一番大事な点だと思います。
工場見学をさせて頂いた山田木材工業様、空知単板工業様には心から感謝を述べます。ありがとうございます。
工場見学と広葉樹市場の見学だけなら、もう一つの目的社員の家族全員が会社の財産である。を実行できません。6月24日に沙流郡日高町にてラフティングを一日2本やってきました。ボートで沙流川と鵡川を下るのですが、乗組員のコミニュケーションが上手く行かないとスムーズに川を下れません。2艘のボートにネパール人のインストラクターが乗り込み楽しんできました。

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